詩吟資料室
詩吟の基礎資料
吟道精神(成文・渡邊緑村)
新設:2009-01-01
更新:2024-06-04

吟道精神   
朗吟(ろうぎん)邪穢(じゃあい)蕩滌(とうてき)し、飽滿(ほうまん)斟酌(しんしゃく)し、
血脈(けつみゃく)動盪(どうとう)し、精神(せいしん)流通(りゅうつう)し、
()(ちゅう)()(とく)(やしな)って
()(しつ)(へん)(すく)うものなり。
吟道(ぎんどう)()(やしな)うの(みち)なり。
(ひと)(せい)()なり。()()くれば()す。
()(もっ)(やしな)わざるべからず。
正風(せいふう)六合(りくごう)(あまね)く、一聲(いっせい)士氣(しき)(たか)し。
(ぎん)(おわ)りて清風(せいふう)(おこ)る。一吟(いちぎん)(てん)()(こころ)
成文 ・渡邊緑村  
社団法人日本詩吟学院岳風会発行
普及版「吟詠教本」漢詩篇(一)
平成20年3月20日改訂版第2刷掲載の「吟道精神」


〔段落・概要・通釈〕を 次項に 掲載
参考資料を別ページ に掲載

八聖殿(横浜市郷土資料館)全国吟詠大会発祥の地
八聖殿(横浜市郷土資料館)
全国吟詠大会発祥の地

<注>
社団法人日本詩吟学院岳風会は、2011-11-01 から 内閣総理大臣認定 公益社団法人日本詩吟学院に移行しました

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次の【段落・概要・通釈】は 別ページに掲げる諸資料を参考に 調整した

段落
概容
通釈
1.第1行目~第4行目
「朗吟は」~
「気質の偏を救うものなり」
朗吟が、どのようなものであって、どのような効用があるかを、『書経』の舜帝の語(ことば)に孔子が付けたといわれる「注釈」を基に説明しています。
なお、孔子注釈と類似内容が『史記』の「楽書」に記されています。
(詩歌などを声高らかに吟じる)朗吟は、心の中のよこしまで汚れた考えを洗い清め、満ち足りて(反応が)鈍くなった心をほどよく調整します。
朗吟は、血液の流れに適度の刺激を与えて血流を改善し、心には生気をみなぎらせます。
朗吟は、過不足無く偏らない温和な品性(中和の徳)を養い、気だて(気性)が偏るのを防ぎます。
2.第5行目~第7行目
「吟道は気を養うの道なり」~
「気は以て養わざるべからず」
吟道が「気」を養う「道」であり、「気」は自ら養うべきものであること、「気」の衰えは死に至ることを説いています。
「吟道精神」の重要な部分で、孟子が説く「浩然の気」に拠っています。
「吟道」は、心身の根元となる活動力としての「気」を養い育てる「道」です。人の生命(いのち)は「気」の盛衰にかかっています。「気」が衰え尽きてしまうと死に至ります。
「気」は自ら努力して養わないと、盛んになりません。外部から与えられるものではありません。
3.第8行目~第9行目
「正風六合に洽く」~
「一吟天地の心」
正しい道(正風)としての吟道普及により、活力ある吟声が士気を一層高め、清風(すがすがしい心地よさ)が生まれ、吟道の極意に到達する悦びを説いています。
「正しい道」としての「吟道」が 世界の隅々まで浸透すれば、大きな声で朗々と吟じることで、士気がますます高まります。吟じ終ると清々し風が吹き起こり、何ともいえない快い境地(別天地)に導いてくれます。
<注>
第2段落は
「気」を『孟子』公孫丑章句上の第2章(孟子の思想をよく示す章といわれる)の一部を基に説いています
第3段落は
「正風」を「吟道」に置き換えた通釈を試みました
なお 「正風」は、戦後 「皇風」から置換されました
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