吟道精神 朗吟(ろうぎん)は邪穢(じゃあい)を蕩滌(とうてき)し、飽滿(ほうまん)を斟酌(しんしゃく)し、 血脈(けつみゃく)を動盪(どうとう)し、精神(せいしん)を流通(りゅうつう)し、 其(そ)の中(ちゅう)和(わ)の徳(とく)を養(やしな)って 氣(き)質(しつ)の偏(へん)を救(すく)うものなり。 吟道(ぎんどう)は氣(き)を養(やしな)うの道(みち)なり。 人(ひと)の生(せい)や氣(き)なり。氣(き)竭(つ)くれば死(し)す。 氣(き)は以(もっ)て養(やしな)わざるべからず。 正風(せいふう)六合(りくごう)に洽(あまね)く、一聲(いっせい)士氣(しき)高(たか)し。 吟(ぎん)じ終(おわ)りて清風(せいふう)起(おこ)る。一吟(いちぎん)天(てん)地(ち)の心(こころ)。 成文 ・渡邊緑村 社団法人日本詩吟学院岳風会発行 普及版「吟詠教本」漢詩篇(一) 平成20年3月20日改訂版第2刷掲載の「吟道精神」
朗吟が、どのようなものであって、どのような効用があるかを、『書経』の舜帝の語(ことば)に孔子が付けたといわれる「注釈」を基に説明しています。 なお、孔子注釈と類似内容が『史記』の「楽書」に記されています。
(詩歌などを声高らかに吟じる)朗吟は、心の中のよこしまで汚れた考えを洗い清め、満ち足りて(反応が)鈍くなった心をほどよく調整します。 朗吟は、血液の流れに適度の刺激を与えて血流を改善し、心には生気をみなぎらせます。 朗吟は、過不足無く偏らない温和な品性(中和の徳)を養い、気だて(気性)が偏るのを防ぎます。
「吟道」は、心身の根元となる活動力としての「気」を養い育てる「道」です。人の生命(いのち)は「気」の盛衰にかかっています。「気」が衰え尽きてしまうと死に至ります。 「気」は自ら努力して養わないと、盛んになりません。外部から与えられるものではありません。
<注> 第2段落は 「気」を『孟子』公孫丑章句上の第2章(孟子の思想をよく示す章といわれる)の一部を基に説いています 第3段落は 「正風」を「吟道」に置き換えた通釈を試みました なお 「正風」は、戦後 「皇風」から置換されました