新設:2012-07-11
更新:2024-06-04
本ページは 2012年4月 (公社)日本詩吟学院が所属会員に配付した 「吟道奥義抄」のうち 「吟法」と「吟調」の項を 按針亭管理人が箇条書的に要約・整理し 若干の注を加えたもので 文責は按針亭管理人にあります
(公社)日本詩吟学院のWebサイトから 「吟道奥義抄」を 繰り返しご覧下さい
ここでいう
吟法 とは
- ①(公社)日本詩吟学院が
- ②将来にわたって変わることがなく
- ③継承されていくべきものとして
- ④取り決めた 「吟詠」上の規則のこと
「不易流行」の
「不易」にあたる
「不易流行」は 俳聖芭蕉の芸術理念の一つ 詳細
ここでいう
吟調 とは
- ①吟詠の調子・音色を整えて 趣(おもむき)を出すこと
- ②時代や流行で変わるもの
- ③個人差があり 統一することができない(統一すべきでない)もの
- ④十人十色 百人百様で これにより多様な芸術性・精神性を表現する
「不易流行」の
「流行」にあたる
「不易流行」は 俳聖芭蕉の芸術理念の一つ 詳細
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吟じ始めるときの
呼吸の要領
- ①先ず 十分に息を吸い込む
(但し 深呼吸は息を吐き出すことから始まる)
- ②直ぐに 吐き出すことをしないで しばらく 息を止める
- ③次に 息を飲み込むようにして 腹の中に落ち着かせる
- ④息を飲み込んだまま 腹を出し 臍を下げるようにする
- ⑤自然 飲み込んだばかりの息が 腹になじんで安定した気分になる
- ⑥そして 肛門を締め上げるように 尻をつぼめることによって
- ⑦吸い込んだ息を 上から押さえつけ 下から締め上げるところに
- ⑧吸い込んだ息の力が発生する
「吟じ起こし」手順
- ①腹式呼吸による深呼吸の後
- ②吟題・作者を唱え
- ③息を静かに大きく吸い 整えて(臍下丹田[せいかたんでん](※)に下ろして)から
- ④呼気に(吐く息)に乗せて発声する(吟じ起こす)
(※)臍下丹田は、臍下三寸(9㎝)辺り体内にある人体の重心で 特定臓器ではない
吟詠の呼吸は
腹式呼吸
吟詠の呼吸は「腹式呼吸」 正しい呼吸法か否かは 次の方法で確認できる
【正しい呼吸】…横から見て 腹が出たり 凹んだりする
【誤った呼吸】…前から見て 肩が上がったり 下がったりする
「吟詠」の音位
- ①「吟じ起こし(吟じ出し)」の音位は主音+半音の(ファ) 止めの音位は主音(ミ)
- ②「主音に始まって主音に終わる」といって差し支えない
→ 「主音」および「基本旋律」を参照
- ③「邦楽」としての「吟詠」と「洋楽(西洋音楽)」とでは、音位が微妙に違う(※)
- ④調子笛を使う時は 必ず邦楽用の調子笛を使うこと
(※)自然律(純正律)と平均律(対数律)の違いを指すと思われる
七言絶句の場合
- ①「二句三息」とは 起句・承句と転句・結句の各二句を一聯とし 各聯を三節ずつに分け 一節が終わる毎に息を吸うこと(息継ぎをすること)
- ②一句を概ね[2・2・3字]に分解し 一聯を[2・2字] [3・2字] [2・3字]に区切って 「節」とする
- ③四句を六息に分けて吟ずるよりも 四句を前の二句と後の二句との二聯に分けて 吟ずる意義の方が重要である
- ④承句の後の息継ぎは 他の息継ぎ箇所よりも長い間を置くことが肝要である
- ⑤なお 素読は 一句一息とし 全体を四息で朗読する
「二句三息」は、文節(吟節)の説明を主とする場合は、「二句三節」という
五言絶句の場合
- ①一句を概ね[2・3字]に分解し 一聯を[2字] [3・2字] [3字]に区切って「節」とする
- ②ただし 例外がある
切ってもよい/
切ってはいけない
箇所
「息を切ってもよい箇所」は 詩の意味と読み方から判断する
【切ってもよい箇所】
- ①切って読むことができる箇所
- ②主語と述語の間で 助詞の「は」または「が」等が省略された箇所の多く
- ③副詞は それ自体切り離して強調する場合
- ④七言が2・2・3字に明瞭に切れる場合 その切れ目箇所の多く
【切ってはいけない箇所】
- ①熟語の途中 名詞・動詞に連なる助詞の間
- ②修飾する詞(ことば)と修飾される詞 目的語・補語と動詞の間
歯切れのよい
明瞭な
発音
- ①明瞭な発音と適切な句読によって 詩意が明確に伝わる
- ②発音が明瞭とは 歯切れがいいということ
- ③明瞭な発音が 吟詠の必須条件
- ④口の開き方が足りないと 言葉が濁り 何を吟じているのかよく分からない
- ⑤口を喇叭にたとえると 声帯は喇叭の基部にある発声器で発した弱い音を 大きな音にして響かせる拡声器の役割を持つ
- ⑥日本語の母音は 「ア・イ・ウ・エ・オ」の5つと 「ン」の6つだけ
望ましい発声
- ①発声は 臍下丹田(※)から発し 明瞭快活で力強い自然な声が望ましい
- ②気魄は雄渾で 荘厳な声が好ましい
- ③ひとりひとりの持ち味を生かした 自然の声がよい
- ④卑俗艶媚な声 鼻声 わざとらしい作り声は、好ましくない
(※)臍下丹田は 臍下三寸(9㎝)辺り体内にある人体の重心で 特定臓器ではない
熟語の読み方
- ①熟語を読むときは 熟語の途中を伸ばしてはいけない
(例) 去年(キョネーン) 詩編(シヘーン)など
- ②特に 間延びに注意すること
- ③また 極端に詰めるのを避けることが 大切である
余韻の吟じ方
- ①押さえはしっかりとする
- ②消え入る(抜ける)ような引き方 止め方をしてはいけない
- ③引き止め 揺り止め 上げ止め 下げ止め
吟詠の主音
- ①吟調の基本となるべき音位を 基音または主音と呼んでいる
- ②吟詠の旋律には 必ず主音にかえる鉄則がある
- ③たとえ どんな節回しでも 最後は必ず主音に戻すことが必須
「吟調」は 次の「基本的な旋律」と「不易流行」の流行としての「吟調」を参照下さい
吟調と基音
- ①吟詠の旋律に 基本的な調子 即ち 「吟調」がある
- ②吟調の基本となる音は 八つあり この八音を大別すると 次の三つになる
【高音部】 ド・シ・ラ……【基音】 ラ
【平音部】 ファ・ミ………【基音】 ミ
【低音部】 ド・シ・ラ……【基音】 シ
- ③三つの基音の何れか一つが 二句三息による切りの音位
(一節の吟じ終わりの音位)となる ただし 基音以外で終わる例外がある
「不易流行」の流行としての「吟調」を参照下さい
吟調と吟符
- ①吟符は 吟調の基本を示したもので 西洋音楽のような楽譜を必要としない
- ②吟符は 示し得る最大限の音位を示し 最小限度の基本音位をもって 基調を踏み外さないようにする最大公約数といえる
- ③吟符をもって 西洋音楽の楽譜のように綿密に決めることは 吟詠の主観と個性を狭めるもので 吟詠自体をつまらないものにしてしまう
「吟符」は、「吟符名称と解説」 を参照下さい
七言絶句の場合
- ①七言絶句は 吟題 作者を除いた本文のみで 1分30秒±10秒とする
- ②この「1分30秒±10秒」は 二句三息の呼吸に叶った時間といえる
「一息」を 約15秒として捉える
五言絶句の場合
一般的に 七言絶句の場合よりも短くなる
七言絶句の吟詠時間から推究する
律詩・長詩の場合
- ①律詩は 絶句二首分だからといって 絶句の2倍では冗漫となる
- ②長詩は 絶句吟詠時間の句数倍では 尚更 冗漫となる
七言絶句の吟詠時間から推究する
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アクセントの重要性
- ①アクセントは 言葉の意味を正しく伝えるために必要
- ②アクセントは 世の移り変わりによって変化する
日本語のアクセント
日本語のアクセントは 単語の高低のことであって 次の四つに区分される
頭高型…<例> 「朝」あさ ………下線部分「あ」にアクセント
尾高型…<例> 「山」やま ………下線部分「ま」にアクセント
中高型…<例> 「湖」みずうみ …下線部分「ずう」にアクセント
平板型…<例> 「兎」うさぎ ……下線部分「さぎ」にアクセント
英語のアクセントは単語の強弱
フランス語のアクセントは抑揚
イントネーションとは
- ①文章に高低をつけることによって 文章の意味を表現することを 抑揚(イントネーション)と呼ぶ
- ②イントネーションは 文章を美しくするため また 感情表現において ある部分を際立たせるために生まれたもの
イントネーションの
必要性と種類
- ①美しい吟調には 美しいイントネーションが必要
- ②意味の上から強調すべき語句に イントネーションをつける
- ③イントネーションは 次の二つに大別される
揚音……高く強い調子
抑音……低く弱い調子
その程度と組み合わせによって千差万別となる
- ④イントネーションの高低と アクセントの高低を 取り違えないよう 注意する
「間」の重要性
- ①「間」の置き方は 極めて大切
- ②その置き方によって 吟詠全体が生きもし 死にもする
- ③適切な「間」が聴く者に与える効果は 巧みな節回しも遠く及ばない
- ④声を出しているときだけが 吟詠ではない
- ⑤声を出していないときも 吟詠であって 休みではない
- ⑥「間」は 長すぎても短すぎてもいけない
-
「間」の修得法
- ①ある箇所での最も適切な「間」は 一つしかない 瞬間的なもの
- ②無意識のうちに 最も適切な「間」が取れるよう 反復練習を行うこと
残心とは
- ①「残心」とは 結句の余韻を引き終わり 呼吸を整えて吟じ終わりとすること
- ②なお 吟ずる前後に一定の礼式がある
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